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2022/05/20 19:07

ブラジル TOH2021 ファゼンタ・ラゴア ナチュラル

              

国:ブラジル
標高:1100m
エリア:スル・デ・ミナス/ミナスジェライス州、アルフェナス
品種:イエローブルボン
農園:ラゴス農園
生産処理:ナチュラル

2人の先駆者

ファゼンダ・ラゴアは、コーヒー産地としてスル・デ・ミナス地区とされるミナスジェライス州アルフェナスの標高1100mに位置する農園です。“Lagoa”の名前の通り湖と肥沃な土壌に恵まれた農園で、100年以上の歴史を有しています。150ヘクタールのコーヒー生産エリアは、区画ごとに丁寧に管理され、区画との間にはコリドー(緑の回廊)が設けられ、自然保護エリア通しが結ばれており、動植物の保護とコーヒー生産の共生を掲げています。特に自然保護エリアでは多くの鳥類が生息し、鳥類学者が訪れるほど希少な生態系を観察する事ができます。

そんなラゴア農園のコーヒーは、チョコレートを思わせる甘さやクリーミーなマウスフィールからエスプレッソで愛され、特にイタリアやドイツでは人気の高い農園で、コーヒーショップのコンテストにおいて高く評価され、確固たる地位を築いています。
                                                                                                    
               

マルセロ・ヴィエイラ

責任者として農園を運営するのはパッセイオ農園の生産者でもあるアドルフォ・エンリケ・ヴィエイラ・フェレイラ氏。曾祖父の代にこの地にコーヒー農園を構え、4世代目のコーヒー生産者です。ラゴア農園は、マルセロ・ヴィエイラ氏がオーナーの農園ですが、現在は生産者として第一線を退き、従兄弟でありスペシャルティコーヒーの知識と長年の経験を持つコーヒー生産者であるアドルフォ氏が農園の運営を担っています。

 マルセロ・ヴィエイラ氏は、スペシャルティコーヒーの歴史の中で欠かすことのできない人物でもあります。彼は生産者、そして農業エンジニアとしてラゴア農園を運営しながらコーヒー生産者としてキャリアを重ねてきました。いち生産者としてだけでなく、1991年にBSCA(ブラジルスペシャルティコーヒー協会)を設立した12名のメンバーの1人であり、2003年まで初代会長を務め、ブラジルのスペシャルティコーヒーを誕生させた人物でもあります。また、現在のCup of Excellenceの基礎となった1999年のブラジル グルメコーヒープロジェクトを推進。その後のCup of Excellenceの創設に関わり、その運営を担うACE(Alliance for Coffee Excellence)の設立(2002年)とACEの初代会長としてスペシャルティコーヒーの普及に尽力したスペシャルティコーヒーのレジェンドの1人です

アドルフォ・ヴィエイラ

パッセイオ農園を営む従兄弟のアドルフォ氏は、1984年に歯科医から生産者へと転身しマルセロ氏と同じくコーヒー生産の道に進みます。1980-90年代にかけてはICO崩壊や降霜、旱魃などコーヒーマーケットを揺るがす要因が多発しており、価格の不安定さや農園経営の不安定さという問題が露わとなり、その後の彼らのコーヒー生産の方向性を決定づけたと語ります。特に山間部に位置するラゴア農園やパッセイオ農園においては、従業員の雇用や資金繰りに困難な状況が続き、マーケットに依存するコーヒー生産を変えるべく高品質なコーヒーの生産へのシフトを模索します。専門の農学者を雇いながら品質向上に取り組み、1998-99年のグルメコーヒープロジェクトの10農園に選出。アドルフォ氏のパッセイオは、そのコンペティションで1位を獲得。高地産のコーヒーの可能性を大きく広げ、山岳部の多くの小規模な生産者に勇気を与えました。

 その後もアドルフォ氏は、ブラジルのスペシャルティコーヒーの第一人者としてコーヒーの品質の向上、伝播に努め、2015/16年にはBSCA会長に選任。近年はより社会的・環境的な活動を通じてコーヒーの持続可能性を模索し、ラゴアに見られるような生態系・環境との調和。女性の社会進出や雇用などに力を入れ、未来へコーヒー生産を繋いでいます。